ホビープログラミングと発表の場

昨日の続き。

ホビープログラミングが広まるにはどうしたらいいか、と考えたときに、やはり発表の場があるといいよなぁと思う。

今は個人で簡単にWebサイトを立ち上げたりできるので、単純に作品を発表するという目的だけなら容易に達成できる。実際、自分もやってる。

でも、それだと各々が勝手にバラバラと公開しているだけなので見つけてもらうのも大変だし、多くの場合、公開しただけでそれっきりになってしまう。たまには、感想をくれる人くらいはいるかもしれないけど。

やはり、いろんな人が作ったものが一堂に会して、なおかつそれらに紹介やレビューが為されて、というような場所がほしい。

有名どころでは、古くはマイコンBASICマガジンあたりかな、と思う。最近では、ケータイJavaアプリ専門になるけどアプリゲット - スマホゲーム専門メディアなどが幾分近いことをやっている。

あとは、Vector窓の杜なんかも、発表の場と言えば場かもしれない。ホビープログラミングに限った場じゃないし、どちらかというと何でもかんでも詰め込んだ倉庫みたいな雰囲気だけど。


が、ここでは、遥か昔の雑誌「MSX-FAN」のファンダムコーナーについて書いてみたいと思う。
ファンダムは、読者から投稿されたプログラム(多くはゲーム)を紹介するコーナーだった。

ファンダムでは、採用された作品の中でも主に編集部での評価が高かったもの(だと思われる)について、編集者10人弱程度によるレビューが掲載されていた。 (レビュー対象の作品群に対し、レビュー参加者全員が総当たりで点数とコメントをつけていく方式) そのレビューでは、編集者によっては平気で作品に0点をつけるなどということがあった。採用レベルに達している作品に、編集者の主観で0点をつけるというのは、かなりすごいことだと思う。このような遠慮のない、容赦のないレビューが行われているということが、とても素敵だと思った。

たしか、あまりにも極端な採点があることに対して、読者から苦言が呈されていたこともあったと思う。それに対する、編集者の一人からの回答は、「レビューというのはそもそも主観的なもの。それを平均化するために複数のレビュアーがいる」というようなことだった。すごく納得した。

話がやや脱線するが、MSX-FANはいよいよ存続困難という状況になったとき、休刊の一年も前から「休刊宣言」を出し、毎号カウントダウンしていくという方法を採ったりもした。そうやって、読者・投稿者を巻き込んで、最後を飾るにふさわしい誌面を作っていこうという姿勢に、心打たれた。おそらく、こんなことをやった雑誌というのは他にはほとんど見当たらないだろうと思う。(あ、今書いてて涙出てきた)

実際のところ、技術的な話題についてはOh!Xのほうが高度で面白かったのだが、読者・投稿者に対する姿勢では、Oh!XといえどもMSX-FANには遠く及んでいなかったと思う。そういう意味で、今まで見てきた中で自分にとっての最高の雑誌はMSX-FANである。次はOh!X。


話を戻して、現状を考えると、MSX-FANのファンダムコーナーに相当するような場は、見当たらないなぁと思う。まぁ、昔を振り返ってもファンダム以外に思い当たらないのだが。

良い兆候についても書いておくと、アプリ★ゲットなどでもやっている「ユーザーレビュー」という形式は、それなりにいいと思う(ホビープログラミングと関係ないけど、Amazonのカスタマーレビューなんかも)。厳しいことを言うと、ホスト側(アプリ★ゲットなり、Amazonなり)が本気でレビューしてしまうといろいろ面倒なことになるので、それに対する逃げの手という気もしなくもないが。それと、ユーザーレビューでは、ユーザーが気の向いたときに気になった作品にだけ好き勝手にレビューを書くわけで、ファンダムで行われていたようなレビューとはニュアンスが違うが、それでも予定調和の生ぬるいレビューよりははるかに意味があると思う。


ただ、アプリ★ゲットなどでもアマチュアの作品を積極的に紹介していこうという姿勢は見られるし、それ自体はいいことだと思うが、自分の考えているのとはだいぶ方向性が違う。

アプリ★ゲットでやっていることは、結局「ユーザーに対して良質なアプリを提供したい」という目的があって、アマチュアの作品を紹介するのはその手段の一つという感じだ。

でも自分が考えているのは「ホビープログラミングを楽しむ人が増えること」が目的であって、ユーザーに利益があるかどうかは二の次でいい。

今のところ、ホビープログラミングの普及ということに向き合っていたプロダクトは、WonderWitchとP/ECE、それに復刊後のOh!Xあたりが最後で、それ以降出てきていない気がする。つまりもう7、8年も前の話だ。誰もやろうとしないってことは、ビジネスチャンスなのかなぁ。それとも、もうホビープログラミングなんて流行ることはないのか。


そういえば以前は自分も、「ホビープログラミングをする人が増えれば、そこから職業プログラマになる人も増えて、プログラマ不足の解消に貢献……」みたいな大義名分を考えていたこともあった。でも今は、正直言ってそんなことどうでもいいと思う。

むしろホビープログラミングをやった人は、職業プログラマになったらかえって不幸になる場合も多いのではなかろうか。なまじプログラミング本来の楽しさを知ってるだけに。だから、ホビープログラマのままでいいんじゃないか。プログラマ不足だの、国際競争力の低下だの、んなこたぁ知ったこっちゃない。