ホビープログラミング

はたらきたい。を読んだ。

「あなたは、何を大切にしてきましたか?」

この問いに何と答えるかが、仕事について考える上での第一歩ということらしい。なるほどな、と思い、考えてみた。

深く考えていくとだんだん分からなくなっていってしまうのだが、とりあえず思いつくのは「ホビープログラミング」なのかな、と思った。本当はハードウェアの工作なんかも含んでもいいので、「ホビーコンピューティング」とでも言ったほうがいいかもしれないが、ひとまず「ホビープログラミング」としておく。

中学でMSX、大学でX68k、ちょっと前はWonderWitchやP/ECEにも手を出してきた(P/ECEは買っただけでほとんどいじってないが)。最近注目しているのはケータイJava

雑誌「MSX-FAN」にプログラムを投稿したり(不採用)、WonderWitchプログラミングコンテスト「WWGP2002」に参加したり(予選落ち)もした。

MSX-FANやOh!Xは、買い始めてからは一度も欠かさず買っていた。マイコンBASICマガジンもわりとよく買った。それらが無くなってしまってからはCマガジンをずっと買っていたが、ちょっと物足りないと感じていた(レベルが、ではなく、魂が)。そのCマガジンすらも無くなった現在では日経ソフトウェアくらいしかプログラミング関連の雑誌が見当たらないのだが、さすが日経というべきかとてもビジネス寄りなのと、2000年1月号の特集で激しく幻滅したときからの不信感もあって、ほとんど買うことはない。


自分はプログラミングが好きだと思って職業プログラマになった。ストレスによる(と思われる)体調不良や、エンドユーザに全然喜ばれていないという事実からの無力感とか、いろいろあって1年ほど前に会社を辞めたのだが、よく考えるとSIerの下請けという位置での職業プログラマ(要はIT土方)、というのがそもそもの間違いだったのかもしれない。

順番が前後するが、社会人になって最初に入った会社は富士通だった。ソフトウェア開発の部署を希望したが叶わず、PCの評価試験をする部署に配属になった。当然、部署異動の希望を出すという選択肢もあったのだが、2年ほど働いている間に「この会社でソフトウェア開発の部署に移ったとしても、面白い仕事はできそうにない」という感触を持ったため、異動希望ではなく退職届を出した。

その後なんだかんだとあって、去年まで勤めていた会社に入ったのだが、結局そこでやっていた仕事は、富士通のソフトウェア部門でやるのと大差ない仕事だったのかもしれない。仕事のすべてがつまらなかったというわけでは決してないが、プログラミングがどんどん苦痛なものになってきていた気はする。


高校生くらいまでは、プログラマといえばゲームプログラマしか思い浮かばない時期もあった。

確かにゲームプログラマには憧れていた。今でも、「自分でゲームを作るのは」楽しいだろうな、と思う。

でも、「プロとして」ゲーム業界に入りたいかというと、何か違う気がする。体力的に、あるいは技術的についていけないのでは、という不安もあるが、そもそも職業としてのゲームプログラマが本当に楽しいのだろうか?という疑念が拭えない。IT土方よりはマシかもしれないが、どうにもプロのゲームプログラマというのが楽しそうだとは想像しにくい。むしろ昔のファミコン時代だったら楽しかったのかもしれないが、今のゲーム業界はほとんどの所が商業化というか、ルーチン化されすぎているのでは?と思う。市場に出てくる製品のイメージがそんな感じだから。だとしたら、作っている現場もIT土方とそんなに変わらないのでは?と思えてしまう。


自分が「ホビープログラミング」に関係した仕事に最も近づいたのは、WonderWitchの開発元である有限会社キュートでアルバイトをした時だと思う(WonderWitchの仕事ではなかったけど)。関わっていた案件が終わるのに伴って、アルバイトも終わったのだが、あのとき無理矢理にでも頼み込んで、続けさせてもらえばよかったのだろうか。ただ、WonderWitchがほぼ終了してしまっている現在、キュートが「ホビープログラミング」と関係ある仕事をしているのかどうかは分からないが。


やはり自分が好きだったのは、単に「プログラミング」ではなく「ホビープログラミング」だったのかなぁと思う。現在、自分のWebサイトMolecule Factorialのトップページの下のほうに"MSX, X680x0 and WonderWitch spirits inside..."と表示しているのは、そういった気分のささやかな主張だったりする。

とはいえ、ただ「ホビープログラミング」をするだけでは文字通り「ホビー」なので、仕事にならない。仕事にするには、「ホビープログラミング」にまつわる何か、を見つけないといけないのだろうけど、それは果たして見つかるんだろうか?

今まで、はてなの有料サービスは使ったことがなかったけど、この際お金払って人力検索はてなで訊いてみようかなぁ。「ホビープログラミングに関わる仕事で飯を食うことはできると思いますか?」と。


最後に、復刊版Oh!Xから、刺激的な文章を引用してみる。自分はこれらの内容すべてに100%賛同というわけでもないのだが、かなりの部分言いたいことは分かる気がするし、「ホビープログラミング」ととても関連があると思うので。

Oh!X 1999春号 p4

……
コンピュータがこれだけ普及して生活に欠かせないものとなろうとしているにも関わらず、人間のコンピュータを扱う能力はむしろ低下してきていないだろうか。おじいちゃんおばあちゃんにも使えるパソコンやOSを作る、というのもひとつの道だろう。が、どんなパソコンやOSも使いこなせるおじいちゃんおばあちゃんを作るのも、もうひとつの道だ。
……
かといって別に「クリエーターになりましょうね」というのが我々のメッセージではない。どちらかというと、「クリエーター」と呼ばれるようになったらもうダメだ。クリエイティブであることが当たり前でなくなったら人間おしまいだろう。
……

Oh!X 1999夏号 p4

シェアウェアというのがどうも好きになれない。Windowsなどでは開発環境自体を揃えるのに出費がかさむので、いく分なりとも回収したいという気持ちもわかるのだが、そもそもそういう気持ちになってしまうような環境というのが好きではない。ことさらにcopyrightをつけるのもなにか鼻についてしまう。昔はそんなの誰も気にしてなかったのに。
……
オープンソース」という言葉にはあまりいい印象がない。フリーという言葉さえ存在しないくらいの状態が自然なのだ。GPLを読んで、「なんて堅苦しいんだろう」と思ったことはないだろうか?
……
ひとたび比類なき自由度を知ってしまうと、既存の環境では満足できない。単にフリーウェアが多いというだけではなく、意のままになるツールがほしい。共有の感覚がほしい。もちろん、「すべてのソフトをフリーにすべきだ」などといっているのではなく、黙っていてもそうなる環境を取り戻さなくてはいけないということだ。
……